寅ブルパニック・外伝 『子寅とピクニック 星月典子の場合』 星月典子ミニゲーム賞品


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“おめでとう。正解だ。”
“やたー!”
“可能な限り希望通りのイベントをやろうじゃないか”
“それじゃあ……”

           31067002の会話より抜粋

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星月典子という人物がいる。詩歌藩国の華族、まぁ偉い人である。
毎日護民官、摂政、国民の着替え、お小遣い管理をやってくれている。

はっきり言って働き過ぎだと皆、心配した。

この人物何かと面白い噂が多く、人間関係を清水魁斗が一覧にした所、藩王自らが「国が滅ぶ」と宝物庫に厳重に封印したという伝説まである。
因みに人間関係図の最初に藩王の名前があったという不確定情報もあるが、詳しく書くと我が身が危ないので、ここでは割愛する。

この人物だが、世間一般の人物評価として真っ先に上がるのが大変可愛らしいである。俺もそう思う。
専属犬士には嫉妬と羨望の視線が向けられたりもする。ある吏族なんかはこう呟いていた。

「俺が換わりたい。」

まぁ、落ち着け。

で、この人物だが、葉崎とのゲームに見事に勝利した。その賞品として、最近心安らぐ時間の少ない藩国民とまったりとしたいとイベントを賞品にしたわけだ。

そこで葉崎は藩のマスコットである子寅達とピクニックに行くことにした。

詩歌藩国の夏は過ごし易く、涼しい高原にでも遊びにいきリフレッシュしようという企画である。

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ピクニック当日。

外を見る星月。しっぽ萎え萎えである。

因みに窓の外は大雨である。

まぁ、そんな事もあるだろうと言う清水の隣で経はしょんぼりとしていた。アフロも萎んで見える姿は雨に濡れた捨て犬を連想させる程のしょんぼりぶりである。

花陵も今日はしょんぼりさんであった。折角お弁当作ったのにーとちょっと涙目である。子寅達が周りで慰めている。

鈴藤はと、会議室を見回すと森精華に話しかけようとして茜に邪魔されている。まぁ、こちらはいつも通りなので気にしないことにしよう。

まぁ、皆楽しみにしていたピクニックが雨で中止でしょんぼりであることは変わらないようである。

「どーしてこう間が悪いんでしょうね。」

ため息と一緒に愚痴が星月の口から漏れる。そして、じっと葉崎を見る。

昔から目は口ほどにものを言うとは言うが、その目は雄弁に語っていた。

どうにかしろ、と。

「まぁ、何とかならないことも無いですよ。ほら泣かない泣かない。」

頭を撫でる葉崎。最近すっかりお父さんである。

「じゃあ、何とかしてください。」

即答する星月。

「それじゃあ、皆さん。お待たせしました。此方へどうぞ。」

ぞろぞろと国民を連れて歩き始める葉崎。

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長い長い階段を降りた先には空間が広がっていた。ちょっとした広場である。

ここは、と聞いたのは竜宮であった。

「大神殿の一部ですよ。この場所を見つけた後直ぐに書類を改竄したので吏族でも知らないはずですよ。」

と答えると、非難の目で見られた。

笑顔で誤魔化すことにしよう。

そんな中、広い空間で走り回ろうとする人物が二名ほど居た。

アルティニと豊国ミルメークである。

その二人にちょっと待ってくださいねといって指を鳴らす。

広い空間に音が響き渡ると同時に、次々と置かれていた蝋燭に火が灯る。さながらイルミネイションの様に広い空間を照らし出した。

空間には、幾つかのベンチやテーブルが置かれており、ちょっとした公園のような光景である。

地下なのに乾いた涼しい風が流れている。

「今日はここでゆっくりしましょう。」

キャンドルに照らされた広場は幻想の中にあるような不思議な空気に満たされていた。

「これって何処に繋がってるんですか?」

短めの髪を揺らして駒地真子が聞いてきた。

「あぁ、この先はE90の舞台になっている遺跡に繋がってますよ。」

駒地の目がキラリと光る。

「まぁ、色々危ない物が見えたので行かない方が良いですよ。」

笑顔の葉崎。因みに目だけは笑っていない。

それに、と前置きして。

「今日はここでのんびりする予定ですし。」

早速ベンチの一つを占拠し始めた。ベンチに座る姿は妙に似合っている。

「葉崎さん。普段からここに?」

好奇心一杯の所に水を差された駒地が振り返って聞いてきた。

笑顔で聞き流す葉崎。どうやら、ここでさぼっていたのは確定のようだ。

「あんまりサボってると小笠原いけませんよ?」

と、後ろから星月。葉崎の頬を汗が流れる。

「まぁ、今日はのんびりしにきましたし、不問としましょう。」

笑顔の星月。つまり、明日問い詰められるという事か。

観念したかのように天井を仰ぐ葉崎。背中は煤けてるらしい。

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一方広場中央にあるテーブルでは花陵が歌いながらお弁当を広げていた。子寅達もそれぞれ頭の上に大きな包みを乗せて手伝っている。

お弁当~お弁当~と歌う花陵に合わせてくるくると踊る子寅達。

あ、と手を叩く花陵。どうやら飲み物を忘れたらしい。

「あー、大抵のものは其処の箱か川の所の籠の中にありますよ。」

葉崎が指差す方向に子寅達が走っていった。

戻ってきた子寅達の前肢には酒類や、ソフトドリンク、紅茶セットやコーヒーメーカーなどが握られていた。

「本当に何でもありますね。」

ちょっと驚いた顔の竜宮。自慢気な葉崎。

で、これは何処から調達したんですか。という質問に凍りつく葉崎。やはり、城の食料庫からちょろまかしたらしい。

「まぁ、今日ぐらいはいいでしょう。」

寛大な人である。が、よくよく考えると明日問い詰めるという宣言にも聞こえる。きっと違うに決まっていると自分を落ち着ける葉崎。

どうしてこの男はこうも締まらないのだろうか。

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中央のテーブルでは皆食事中である。

子寅達は一足先に食べ終わって、並んでダンスを踊り始めた。誰だ酒を飲ませたのは。

今日のBGMは意外な事に藩王である九音詩歌である。

本人曰く、興がのっただそうだ。

元々、この国は歌を奉ずる国である。王族ともなると練習は義務にもなっているのかもしれない。

九音の演奏が広場に満ちる。

涼しいはずの広場が、ほんのりと暖かくなるような、そんな曲だ。

踊ろうかと聞く須藤にアルティニは頬を染めて頷く。断じて羨ましい訳ではない。

すこしぎこちないが楽しそうに踊りだす二人を見て、経は清水の方をじっと見る。凝視といってもいい。

視線に気付いた清水は珍しく彼の方から誘うことにした。本当に珍しい事もあるようだ。

顔を真っ赤にする経。右手と右足が同時に出ているのも気付かないようだ。




子寅達の内一体が転んだ。あちこちで玉突き事故発生。

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士具馬と豊国が並んで今はレンジャー連邦の人である豊国ミロの話で盛り上がっていた。

彼女の過去を聞けた士具馬は嬉しそうに微笑んだ。

豊国は戦場での戦い方を熱心に聴いている。

士具馬は出来る限りの事を教えた。

彼が戦場に出ずにすむ日が来るようにがんばろう。

そう決めた。

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こうして、それぞれがおもいおもいの休日を過ごしていった。

なんでもない、其れで居て少しいつもと違う休日である。

それはきっと素敵な事なのだろう。

~Fin~

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