小笠原ミニ学校イベントお土産SS『葉崎のお土産選び』

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“私は駄目だ。目がぐるぐるする。”
“普段の余裕が欠片もないですね。”

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ここ数日、葉崎の様子がおかしかった。いや、元々変な人物ではあるのだが、普段と明らかに様子が違った。ありていに言えば、狼狽していた。

どうかしたんですかと聞かれても、私はもう駄目だ、と訳のわからない返事が返ってくるだけで要領を得ない。皆それなりに心配した。一部のものは、これで藩国内は少しは平和になるだろうと喜んだ。酷い話である。

一方葉崎は部屋の中をぐるぐると歩き回っていた。まるで腹をすかせた熊である。

口から漏れるのは、あの人に会える。何を着ていこう。いや、小笠原だから制服か。あの人に会える。香水は付けない方がいいかな。いや、あの人は匂いにはこだわらなかった。あの人に会ったら何を話そう。あの人に会ったら……。

という具合である。明らかに様子が、おかしかった。

そんな葉崎が部屋の中でぴたりと立ち止まった。

部屋を覗き込んでいた子寅達がびくりと震える。

「何かお土産を持っていかなくては!」

あの人は何を渡したら喜ぶだろう。アクセサリーがいいだろうか。いや、そういうものには拘らない人だった。
あの人は何を欲しがっただろう。本なんかどうだろうか。いや、あまり興味はないかもしれない。
あの人はあの人はあの人はあの人はあの人はあの人はあの人はあの人は……かなり重症である。

「あぁ、そう言えば夜明けの船に居た頃は料理を作ったら喜んでくれたな。」

元々食事も睡眠も必要のない人である。たまに作る料理は優しい表現を使っても、酷いものであった。黒い炭化した何かをどうぞと渡された時のことを思い出す。

何故か大宇宙の真理が見えた気がした。

でもまぁ、あの人の作ってくれたものは独創的な味だし、何よりあの人が作ってくれた事に意味が……と妄想を続ける葉崎。おーい戻って来い。

そうだ。お弁当を作って行こう。元ホープ葉崎京夜はそう結論を出した。

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自室のキッチンで鼻歌を歌いながら料理をする葉崎。こわごわと覗き込む子寅達。まるで悪夢である。

もっとも、中年男性にも、料理のうまい人は多い。プロになろうとした人や、プロ人は勿論うまいし、それ以外でも、自炊が長く、つまりは作ってくれる人がいない人も料理がうまい場合が多い。後は、誰かに食べさせようと必死で練習した人もいるだろう。

葉崎もこれに当てはまった。どれに当てはまったかは言わない事にする。

スープの出来はどうかなと、小皿に移して味見をする葉崎。

ふと何かに気付いて愕然とする。

「これではまるで、恋する乙女ではないか。」

ぶっ倒れる葉崎。どうやら死にたくなったらしい。

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後日、小笠原へ出発する葉崎はしっかりと弁当箱を握っていた。

~Fin~

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